1.日本における傾向として通常感染初期に上昇するIgM抗体の反応が低く遅い。
2.無症状の方には、PCR陽性にも関わらず2週間経過しても抗体陰性が持続している患者さんが少数ながら存在するので細胞性免疫やIgM,IgG抗体以外の抗体が関与している可能性が考えられる。
3.早期からIgMが上昇する患者は重症者が多い。
4.ワクチンによる中和抗体獲得が不十分であった場合、デング熱の時に認められた抗体依存性重症化(AntibodyDependent Enhancement)という問題が課題となり得る。つまり、ワクチンを投与された人の方がかえって重症化してしまう可能性があることも頭に入れておかなければいけない。
5.抗体検査の結果から現在判明している感染者数は実際には10倍以上多い可能性が高い。
6.PCR検査はコロナ陽性と出た場合はその時点での感染力の有無は別として、感染者と言えるが、PCR陰性の場合には、感染者ではないと言い切れないことが問題である。
7.時間が経過した患者における抗体検査は、rule inにもrule outにも非常に有用で時にPCR検査を凌駕するが、コロナ感染者の中の一部に2週間経過しても抗体陰性者が存在するため、より総合的な検査方法の確立が求められる。
8.無症状者の中に含まれるスプレッダー(感染を拡大させる能力をもつ人)をいかに発見するかが今後の大きな課題であると共に、日本国内全体において知識や 検査体制を結集することがより重要になってきている。
9.臨床経過上、CT画像にてCOVID-19感染症が疑われるもPCR陰性の場合は、抗体検査が有用である。
以上を踏まえて今後はコロナ対策しては、2020年7月22日現在においては下記のようになっていくと考える。
有症状者については発生から2ー9日目までの検査は鼻咽頭や唾液からの検体を抗原検査あるいはPCR検査及び抗体検査施行する形が望ましい。それ以降は抗原検査ではなく、PCR検査と抗体検査で診断し、更にはコロナウイルスのN抗原、S抗原の精密検査へ。
無症状者については、無秩序にPCR検査することは無駄が多いため可能な範囲で抗体検査を施行し抗体陽性者が多かった地域に絞ってPCR、抗原検査を進めていくことが望ましい。
細胞性免疫、免疫グロブリンAの関与など、今後情報更新が続くだろうから、なるべく最新の情報を踏まえながら質の高い風邪、発熱患者さんのフォローをしていきたい。
五十子 大雅