新型コロナウイルス感染症治療について

これは1人の総合内科専門医の意見であり、様々なご批判があることは十分に理解している。その上でこの医療現場を憂いて意見を述べることとした。

私自身、2020年4月25日現在、私個人のクリニック、大学での外来、一般病院の外来そして企業の産業医という様々な仕事をしている中で、どうしても目の前、つまり自分とお会いすることの出来た方には想い、考えを伝えられてもそれ以外の方には伝えられないので、このような場で意見を述べさせて頂くことにした。

現在、様々な薬剤が新型コロナウイルス感染症に効果を発揮出来るか臨床試験中であることは皆様も多くの情報源からも周知の通りのことと思う。しかし未だ治療法は確立されていない。

治療法が確立されていないからこそ、多くの方の不安が解消されていないのだ。 

もちろん治療法が確立しても全ての不安が払拭される訳ではないが、大きく医療が変わることは間違いない。

本日COVID19感染症治療に携わる医療者のネットワークから、再度、大学病院を始め感染症治療の中心となっている医療機関での逼迫した情報が入って来た。

多くの新型コロナウイルス感染を心配した人で救急室が埋め尽くされている、と。

またもう一つ。先日TV出演されていた医師が、なるべく早期の新型コロナウイルスPCR検査を受けることが大変重要であることをお話しされている内容も目にした。

保健所も感染症治療の中心施設も逼迫している中、どのように対応するべきなのか?

おそらく内科医療に携わっている全ての医師がその悩みに直面していると思う。

その中、私の中で確固とした考えがあるのでここで述べることとする。

2020年4月25日現在の東京において、微熱がある、何らかの上気道症状がある人を新型コロナウイルス感染症で無いと断言できる人はいるか?

間違いなく答えはノー。

どうしてか?これだけパンデミックに拡大した感染症で初期のいわゆる、ほぼ症状が明らかでない時でも新型コロナウイルス感染症であった方々がいることが明らかな状況において新型コロナウイルス感染症ではないと言えることは不可能だからだ。

では全員新型コロナウイルスPCR検査をやるということなのか?先日TVで出演されておられた先生のお話だと早期に対応することが重症者を減らすのでやるべきだと述べた。

それは綺麗事ではないのか?早期に治療したら良いのはどんな病気でも同じですよと、治療は何も投薬だけではない。経過をみること、免疫力を引き上げる漢方薬を服用して軽症な方々が自宅にてゆっくり過ごすことより本当に新型コロナウイルスPCR検査を受けた方が良いと言えるのか?

もし直接会ったら面と向かって討論したい。

誰でも日本国民全員が何かしら風邪症状があったら心配だから検査したいのではないですか?

なぜなら亡くなっている人の姿を見たりニュースで聞いたりすれば不安になり自分も感染しているのでは?と悩みますから。

その気持ちはとてもよく分かる。全員早期に検査してインフルエンザウイルス感染症のように抗インフルエンザ薬があるのなら、医療経済的なことは考える余地はあるかもしれないが、全員検査したら良いと思う。治療法が確立しているのだから。 

ではその先生に聞きたい、あるいはそのように思っている方々に聞きたい。

アビガンもイベルメクチンも新型コロナウイルスPCR検査で陽性になった人全員に投与されているのですか?

答えはこれもまたノーだ。

皆さまご存知の通り。軽症の人は今までは全て病院で入院して頂いていたが、

現在は軽症者は上記のような投薬は受けずにホテルに移動することになっている。

ニュースでも感染症対策が医療機関において崩壊寸前であることも流れているので、お聞きなられていない人はいないだろう。

そのような時に軽い風邪症状と思われる時期になるべく早期に新型コロナウイルスPCR検査を!なんて私から言わせればふざけているし、多くの人に寄り添っているかのように見せる偽善にしか見えない。もちろん様々なご批判があるだろうし、ネットではなく堂々と議論することが大切だろう。

全く異なる内容ではあるものの自分が研修医であった時のアルバイト先で経験したことをここに記す。

ある病院で勤務していた時、救急受診した患者さんから、お腹が痛いからソセゴンを注射して欲しい、と。 

もちろん虫垂炎の場合もあるだろうし、腹膜炎やイレウスのこともあるからきちんとした診察、検査が必要だ。しかし血液検査や画像検査を行っても全く異常は見つからない。

でもお腹が痛いからソセゴンを打って欲しいと。多くの内科医や外科医の先生であればおそらく1度や2度くらいは経験したことがあるだろう。ソセゴン中毒の患者さんであったのだ。

私は最後まで打たなかった。夜中の2時に来ておそらく5時くらいまで粘っていたように記憶しているが打たなかった。

それには信念があるからだ。

打てば患者さんは満足し、それが終われば帰宅してくれて、私たち医療者はしばしの睡眠を取れる。翌日の通常の業務を考えれば早く寝たい気持ちが無い医師はいないだろう。

私から言わせれば何人かの心ない医師が気軽にソセゴンを注射して来たから、その人は病院に来れば打ってくれると思って来たのだろう。

でもその打ち続けることを続ければその方は死ぬまでソセゴン中毒から解放されることはないから、その日だけでなく、何度来院されても私は断った。

それが正しいのか否かはそれぞれの先生が考えれば良い。痛みを取ることができるのなら注射しても良いのでは?痛みは本人にしか分からないでしょ?もちろんそのような考えもある。

でも私は自分がやった対応を正しいと今でも心から思っている。ソセゴン中毒と新型コロナウイルス感染症を同じに語らないでくれよ、と必ず言う人がいるでだろう。

でも全く同じことなのだ。正しい答えが無いという点において。。。

幸いなことに私のクリニックには信頼して来院される患者さんが多い。

おそらくいつも真剣にその方に心から向かっているからだと思う。

私自身診察しながら、いつ自分が逆に患者の席に座ることになるか分からない

と思いながら接している。そのような方に上記のようの経緯、ソセゴンのお話まではもちろんしないが、新型コロナウイルス感染症治療の現状をお伝えすると理解してくれ、どうしても検査を!

という方はほぼいないように今のところ感じる。

私は断言する。

新型コロナウイルスの標準治療が確立するまでは、軽度の風邪(軽度の風邪と言うには診察が最も大事である。風邪診療は内科学の奥の深さをマザマザと感じる。もっとも難しいと言っても過言ではない。その方の免疫力も考慮しなくてはいけないし、病原体が何かも想像しなければいけない。発熱がなくても重度の肺炎の方もいるし、胸の音が正常でも、体内の動脈血の酸素飽和度を簡便に測定するサチュレーションが正常でも、顔色を見て具合が逼迫している人もいるわけで)の人が来院しても、間違いなく保健所、あるいは基幹病院に行って新型コロナウイルスPCR検査を受けて来てください!とは私は言わない。

検査を受けたいという方は別の医療機関に行って頂ければもしかすると早くに検査を受けれるかもしれないからどうぞ行ってくださいと伝える。

私が重症でないと判断した方には間違いなく新型コロナウイルスPCR検査を勧めることはしないが、自分が拝見した患者さんには最大限の新型コロナウイルスを含めた風邪の初期治療を提供し、もし少しでも悪化傾向が認められれば、必ず新型コロナウイルスPCR検査を受けてもらえるよう私の勤務する大学病院や友人のいる病院、保健所に掛け合う。

これは必ずだ。その人を救命しようとする情熱は誰にも負けないつもりだからだ。

この逼迫した医療状況を鑑みて、以前クリニックのホームページにもアップしたが、訪れた方に最大限の医療サポートを提供しようと強い信念を持っている。

診療時間も風邪診療だけに費やす時間を作り、一般の診療と分けた。

オンライン診療も電話診療も行う。

今までは甲状腺や糖尿病、高血圧治療ばかりやってきた。

でも今は地域医療の風邪診療の底上げなくして医療崩壊は免れないと感じている。

私と異なる考えの方は異なる医療機関を受診して頂ければ良いのだ。医療はお互いの信頼関係無くして有り得ないから。

今までもこれからも患者さんから信頼されないクリニック、医療機関は衰退し、信頼されるところは残るだけだ。

常に真剣に勉学に勤しみ、患者さんを心から想い、良い医療を提供し続けることが医師としての使命である。政府の今までの対応に問題があることもあるかもしれない。でも非難して改善するのか?

もっと建設的な意見、行動を啓蒙することの方がよっぽど、医師の務めだと思う。

もっと笑って、もっと気持ちよくなることを発信し、元気になってもらえるようにした方が良いと心から思う。

この日本の窮地に僅かばかりでも貢献出来れば、今まで育ててくださった諸先輩の先生方、研修医時代含め今まで医師として出逢い、迷惑をかけて悩ませてきてしまった患者さん方、またその家族の方々、私の家族、そして友人の為になると信じて医療に邁進していきたいと思っている。

どうか過度な心配はしないで、でも外出は出来るかぎり収束に向かうまでは控え、人事を尽くして天命を待つようにそれぞれが行動したい。

気持ち良く寝て、旬のものを頂き、そして身体を動かす。なるべくギスギスした気持ちでなく、大らかな気持ちで生活しなければ健康にはなれないと思う。
少し体調がおかしいと思ったら温かいもの、ビタミン豊富なフルーツなど摂ってゆっくり休んでください。1日経って改善しなかったら我慢せずクリニックにいらしてください。丁寧に診察させて頂きその方に合った漢方薬含めお薬をお渡しします。だから心配し過ぎないで、全力でみなさんを支えようとする医療が目の前にあることを信じてください。

いつの日か口元にも心にもマスクが無くなる日を心から願って。。。

最後に言いたい。

心身一如である。

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