おそらく私を含めたかなり多くの国民が、緊急事態宣言と何の違いがあるのかよく分からないまま、まん延防止等重点措置の適用を受けた中で生活してきたのではないか?!
無論、細かく言えば違いはある。対象地域が都道府県単位なのか知事が指定する地区町村単位なのかや、休業要請が可能か否かや、命令違反への罰則が30万円以下の過料か20万円以下の過料かなどで違いはある。
しかし実質上、私達が生活する中でほとんど変わりはない。
国民も馬鹿ではないので、ほんとにまずいんじゃないか?罹ったら死んでしまうの?と感じれば自分で判断し生活を制限する。1度目の非常事態宣言の際の電車のガラガラ具合や街中から人が消えたあの光景を忘れた人はおそらくいないだろう。
しかし1度目の非常事態宣言宣言明けに再び増え始めた患者数の中で、状況は少しずつ変わってきた。自分の周りに罹患した友人が現れ、その人が普通に回復する。そんな姿を見る機会が増えれば死ぬほどまでに恐ろしい病気ではないのでは?と感じ始めたに違いない。
その証拠に、感染拡大が始まった当初は多くの人がこぞってPCR検査を受けたいと切望していたが、今ではPCR検査はやりたくないという人さえ増えてきた。それはなぜか?会社に知られたくない人もいるだろうが、自分が死んでしまうかもしれない病気に罹っていると心配したら間違いなく検査を受け、何かの際にインテンシブな治療を受けれられるようにしたいはずではないのか?
コロナウィルスに罹患してもほとんどの人はただの風邪症状で終わることが多いと気づいたから面倒なことに巻き込まれたくないと感じているのではないか?!マスクをし、手洗いすれば外出しても良いよね、という雰囲気が蔓延した。当然免疫がついていない人同士が接触すれば再び感染者は増加する。そして2度目の非常事態宣言発令。
健康への意識が高く、お上から言われたことはある程度真面目に聞く日本人だから、やはり非常事態宣言が発令され外出が制限されれば当然感染者数は減る。しかしそこまで下げ切らなかったからやり続けてもしょうがないと政府も考え、宣言解除に至った。また再び宣言が解除されれば当然、感染者数は増え、今現在を迎える。
飲食店への休業要請や、お酒を含む飲食は20時までと言う時短要請など繰り返してきたが、結局は制限を解除すれば増加する。制限をしていなければ更に多くの感染者数、重症者数になったことはほぼ間違いないと思うので、今までの制限が無駄であっとは言わないし、思わない。
しかし、イスラエルのワクチン接種後の状況から考えると、大多数の国民にワクチンが行き渡り接種が完了しない限り、同じやり方では今までの感染動向が繰り返されるのはほぼ間違いない。ワクチン接種が国民の大多数で完了するか、何らかの形で十分な抗体を多くの人達が獲得するまで、感染の広がりは制限しない限り続くだろう。
そこでこれから書くことは極めて個人的な私見なので、非難も重々承知の上ではあるが、内科専門医としての意見を述べたい。
重症化する可能性が高い人が速やかにPCR検査を受けられる体制は極めて重要だが、極めて軽症、軽微な風邪症状の人全てがPCR検査を受けることが本当に必要なのか?意味が大きいのか?をみんなで考えて欲しい。
日本において新型コロナウィルス感染症が広まりつつあった当初、多くの自治体、医療機関においてPCR検査をしていなかった。海外からも、そして日本の一部の政治家やマスコミの大多数からも、症状がある人全てにやらないのはおかしい、意図的にやらないのではないか?など日本の政策が非難し続けられた。私は感染者が増え始めた当初から現在に至るまで一貫して、症状がある人全員にPCR検査を行うことには反対してきた。もろちんやりたい人にやれる環境を作ることには賛成であるし、先程述べた重症化しやすい人が速やかに受けられる体制整備は非常に重要であることに異論は全くない。しかし、PCR検査は現在存在する新型コロナウィルス感染症の検査の中で最も精度が高い検査ではあるものの100%の感度ではない。10人中8人、9人くらいは真のコロナ感染者を陽性と言えるが、逆に言えば10人中1.2人は本当はコロナ感染者であっても陰性と判定されてしまう訳である。ということは、陰性です、と判定されても症状があれば自宅待機しないと感染拡大に貢献する可能性があり得るということである。
つまり自宅待機を余儀なくされるPCR陽性者だけでなく、風邪症状がある陰性者も本来であれば自宅待機が必要であり、検査を受けようが受けまいが何の違いも起こらない訳である。
実際に発熱専門外来を始めてから今までに数千人の発熱患者を診察し、数百人の新型コロナウィルス感染者を診察して来て感じることは、重症化しやすい人をいかに正確に病態を判断し、手厚い医療体制に引き継ぐかが最も重要で、軽症な風邪症状の人は検査する必要はほぼなくきちんと自宅待機すれば良いという、極めて当たり前の風邪対応で良いと心から感じる。
今まで自身のFacebookやInstagram、YouTubeでも睡眠や食事、運動の三要素こそ最強の感染症対策であることを発信し続けてきたが、自分が健康でなければ外出を控え、健康的な生活をしているようなら自らが何が大切か考えて自由に行動する、このような生活様式が今後必ず求められてくると思う。
いかに自らが不健康な生活をしていたかを憂い、自分の身体作りに真剣に取り組めば、仮に感染しても重症化することなく普通の風邪のように治癒に向かう人がほとんどだと思う。当たり前だが、免疫が低下している癌治療中の方や、心臓疾患、肺気腫などの呼吸器疾患、コントロール不良の糖尿病の方など自身で気をつけなければいけない人は感染者が多い現状は外出を控えるしかない。また免疫が低下した方と同居している健康な方も同様である。
飲食店の営業時間についても時間で制限することは全く意味がないから、みんなが守ろうとしないし、守りたくないと感じるのである。お昼間は飲食して良くて、夜は禁止では、道理が通らない。お酒を呑めば声が大きくなったり、時間が長くなったりはする。しかし、お店側もアクリル版の設置や換気を徹底し、飲食させて頂くお客さんの方が大声出さないようにし、話すときはマスクをすることを徹底出来るなら全く営業時間を制限しなくて良い、とすれば極めて理にかなっているし、守る人も増えると思う。20時まで、21時までにお店を閉めれば感染対策は可能と考えているなら、間違いなく失敗するし、現に失敗し続けてきているので、新たなスタンダード、新たな理にかなったやり方を進めていって欲しいと切に願う。
本人は健康であっても同居する方に身体の弱い方がいる場合は下記のようにしたら自由度が守られるのではないか?感染のリスクが高い場にいた健康人は身体の弱い同居人が居る自宅に戻ったらマスクをし、症状が無いまま10日間経過したらマスクを外して生活するようにすれば良いのではないのか?!
もっと理にかなった、そして自由度がいかに残せるのかを考えるべきではないのか?!
なんでもかんでも制限すれば、コントロールは容易であるのは当たり前である。いかに制限をつけずにより良い生活を作ることが出来るのかそれぞれが考えることが求められていると強く感じる。
最後に当然感染者数と重症者数には相関がある。しかし、私達の生活に関与するのは、間違いなく重症者数であり、それに伴うベッドが充足しているか否かではないのか?
個人的には感染者数が何名です、という報道は今後要らないと思うし、その代わりに重症者数とベッドの占有率のみを報道したら良いと思う。
本当の自由とは?をそれぞれが考え、多くの人の理解が得られる政策に期待したいが、本音をなかなか言わないのが政治家でもある。
だからこそ国民ひとりひとりがそれぞれ熟慮し、行動していきたいと心から想うとともに、またそれを許す国の度量の広さに期待したい。