不安や緊張を感じると、おなかが痛くなりトイレに行きたくなる、環境が変わった時に便秘をするなどの経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
そのように脳の状態が腸の機能に影響を及ぼすことは古くから知られていましたが、
脳から腸への影響だけでなく、腸の状態のさまざまな変化が脳に伝わり、気分や感情という心の状態にも影響を及ぼすことが分かっています。
この脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係は「脳腸相関」と言われます。
例えば、私たちが脳で幸せを感じるもとになる「幸せ物質」のひとつであるセロトニン。
このセロトニンの生成にも特定の腸内細菌が関与しています。
セロトニンが減少してしまうと、ストレスへの耐性の低下、イライラ、睡眠の質の低下などが引き起こされることになります。
また、過敏性腸症候群のように潰瘍やガンがないのに便通異常や腹部症状を繰り返す疾患では、腸内細菌の異常により腸から脳への信号伝達に異常をきたしているようです。
腸は食べ物を消化して栄養素を吸収する場所であることから消化器官として知られていますが、その役割に加えて「免疫系」「内分泌系」「神経系」にも関わる重要な器官です。
多彩な働きを持つ腸内細菌なので、そのバランスが崩れると単に下痢や便秘、腹痛などの消化器症状にとどまらず、免疫力の低下をはじめ、腸内細菌が生み出す酵素が働かないことで代謝低下や血流悪化が起こり、肥満や生活習慣病リスクが上昇するほか、日本の高齢者において、腸内細菌の組成と認知症が深く関連している可能性があることが判明したという研究発表もあります。
よい腸内環境を作るための食事は
・食物繊維の豊富な食事を心がけて善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌など)を増やす
・肉食中心から菜食中心にして悪玉菌(ウェルシュ菌やブドウ球菌など)を増やさない
・発酵食品を積極的に摂る
・「水分」ではなく「水」を摂る
などがおすすめ。
また食事以外に、良質な睡眠で自律神経を整え、適度な運動も必要になります。
腸内環境を整えて健康維持に努めましょう。
看護師 上原